今回は、新企画です!
You Tubeを使ってメガコンテナ船の内部に潜入したいと思います。
今回ご協力を頂いたのが、登録者約42万人(2020/06/22現在)香港有名YouTuberの「JeffHK」さんです。
彼は、メガコンテナ船の船乗りで、2016年からYou Tube投稿を始めています。
船内生活や航海中のタイムラプス動画を誰にでも分かりやすく撮影・投稿しています。
今日紹介する動画以外にも多数の動画をアップしていますので、ぜひご覧ください。
YouTube(JeffHKさんの動画)
要旨
① 本船紹介
② 船内探検しましょう!
③ 動画以外にも・・・
1.本船紹介
今回紹介する動画に登場する船舶は、
船名 : OOCL ATLANTA
総トン数: 89,010GT
全長 : 323m
全幅 : 42.8m
高さ : 60.5m(船底からマストの上部まで)
積載 : 8,063TEUs
簡単に説明すると、香港のOOCLという会社の船で、当時(2016年)メガサイズと呼ばれる非常に大きなコンテナ船です。
街中でOOCLと書かれたコンテナがトレーラーで運ばれているのを見たことがあるでしょうか?そう!その会社です。世界的にも日本郵船(NYK)、商船三井(MOL)にも引けを取らない超有名企業です。
全長を見て分かる通り、東京タワーとほとんど同じ長さです!
さらに、高さは約20階建ての最上階の見晴らしになります。
ちなみに、積載の8,063TEUとは、20フィート(約6m)のコンテナが約8,000個積める能力があるということになります。街で見かけるトレーラーに引かれているコンテナを8,000個も一度に輸送することが出来るのです!モーダルシフトが期待されるわけですね!
2.船内探検しましょう!
さて、動画を観ていきましょう!
ジェフさんが船内を順に案内してくれます。
まずは「コンパスデッキ」
船の一番上から周囲を一望できます。コンテナの先が船首側です。
ここにはレーダーがあり、くるくる回って周囲の状況を探査してくれます。
船のファンネル(煙突)が見えます。ファンネルには社名や社章が大きく書かれているので遠くからでもどこの会社なのかを知ることが出来ます。広告塔みたいなものですね!
真夜中に仰向けになって満天の星空を眺めるのにいい場所かもしれません。
その時はファンネルからのススが背中につかないように注意はしておきましょう。
また、レーダーなどの高電圧機器には近づかないでおきましょう。「Danger(危険)」と書かれていますから。
「船橋(Bridge)」
コンパスデッキを一つ降りると船橋に到着です。
英語では、ブリッジと言い、操船や指揮を取る船舶の頭脳部になります。
コンパスからレーダー、操舵機、電子海図(ECDIS)、エンジンテレグラフ、計器類がここに集約されています。映像では汽笛を鳴らしていますね!
周囲が見渡せるよう窓が大きくなっています。横幅が40mもあるので全力疾走でも5秒はかかります。サイドミラーはないので曲がる時は後方を確認するためにしっかり歩いて見にいきましょう!
ブリッジでは普段はコーヒーを飲んだりリラックスをすることが出来ます。航海中はしっかり見張りをしなければなりませんが、リラックスしながら仕事が出来ます。
「エレベーター」
高さ60mです。エレベーターがなければ足がパンパンになってしまいます。各階には、居住区がありますのでマンションみたいですね。
船長は、ブリッジに真っ先に行けるようにすぐ下の階にいます。下の階になるほど、航海士や機関士、部員さんとなっています。
階段を降りていくとジェフさんの部屋にたどり着きます。ちなみにこのクラスの船は全員個室になります。
「居室(Cabin)」
ジェフさんの部屋はスタンダードサイズと言っていますね。
船長クラスになればもっと大きな部屋で来客用の別室もついています!
個室には、冷蔵庫、クイーンサイズベッド、机、ソファ、バスルームがあります。
ベッドが大きいのは快適でいいですね!しっかり整頓をしておかないと大時化で船が動揺して帰ってきたらぐちゃぐちゃってこともあるので注意です。
「カラオケルーム・図書館・卓球・ジム・バスケットボールコート」
船内生活を楽しむために様々な工夫がされています。まずは、大人気カラオケルームです。
カラオケは世界中で通じる日本語ですよ!「寿司・天ぷら」よりカラオケの方が世界的には有名かもしれません。私が航海士時代に、夕食後など続々とカラオケルームに人が集まってくるのを思い出しました。
図書館では読書をし、DVD鑑賞、卓球やジムで汗をかき、人が集まればバスケットボールをするのもいいですね!!週末になると体を動かしたくてウズウズしている人が集まってきます。港に入っている時は忙しいので出来ませんが、航海中は良い息抜きになります。
「洗濯乾燥室」
洗濯機は居室外にあります。エンジンの熱を利用している乾燥室があるので24時間いつでも洗濯可能です。
「ボンドストア」
船内のコンビニみたいなものです。有料です。ボンドストアがないと歯ブラシ忘れたって時に窮地に立たされます。次の港まではが磨けませんからね。ボンドストアは、日用品からお酒、カップラーメン、タバコなどが置いてあります。
お酒は、飲み過ぎ厳禁で飲める量が会社によって決まっています。私の場合は、一日ビール2缶に抑えていました。免税で買えるので日本の有名ビールが1缶100円を切っていました。
「冷蔵庫・冷凍庫」
重要な食料を保存しておくところです。日本人船員の乗る船では日本料理が出来るコックさんが乗っています。味噌汁やうどんといった味を楽しむことが出来ます。
船食は法律で決まった金額が使われますのでお腹いっぱい食べることが出来ます。
週末になると甲板上でBBQをやったりします。豚の丸焼きなんかが定番ですね!
「キッチン・食堂」
キッチンではコックさんが毎日調理をしてくれます。また、食堂は士官と部員で2つに分かれています。動画では、美味しそうでボリューミーな料理ですね!
「救命艇(Life Boat)」
ライフボートです。船を捨てて逃げなければならない時に乗り込みます。そんな状況にならないことを願いますが、定期的に避難訓練のようにトレーニングをしています。
中には、保存食料・水などが入っています。生き抜くために諦めるなという本も入っています。ちなみに、タイタニックのようにライフボートが足りず、みんなが乗れないなんてことはありません!あの事故を契機に全員が十分に乗れるライフボートが用意されることが法律で義務付けられました。
「会議室・オフィス(Ship’s Office)」
その名の通り会議室です。今日やる作業のミーティングや書類作業に利用します。
「緊急対策室(Emergency Headquarters)・着替え室(Changing room)」
船の火災は非常に怖いです。いくら119番をしても消防車はやってきてくれません。そんな時は、みんなで協力して鎮火します。ここには、消化器類・防火服などが置かれています。船乗りは、研修で防火の知識・消火器の使い方、救急救命も学びます。
着替え室はその名の通り、着替えをする部屋です。汚れてしまう船外作業や汗だくになるエンジンルームへ行く時にここに立ち寄ります。
「船尾(Aft Station)」
さて、外へ出ていきましょう。室内は空調があり快適ですが外はその地域の気候によります。防寒着からTシャツまで用意しておきましょう!
まずは、船尾へ。船乗り用語では、艫(トモ)と言います。広い空間に出てきました。コンテナが数個ありますが、荷物がもっとある場合は空間の上部はコンテナで埋め尽くされます。
そして、この大きなドラムを動かしてロープを出して陸上のビットに係留します。300m級のメガコンテナを止めるだけのロープは人力では動かせませんね。たくさんのロープで陸に係留します。
「船首(Forward Station)」
次は、船首側へ行きましょう!船乗り用語では、艏(オモテ)と言います。
ジェフさんは歩いて5分かかると言っていますね。300mもの距離を歩くのですから、忘れ物はしないようにしましょう。途中にあるのが、救命筏(いかだ)です。こちらは海に落ちると膨らみボートとなります。こちらも乗ることがないようにしたいですね。
オモテには、錨があります。非常に大きいのが分かります。これを海底にドスンと落として錨泊することもあります。白い棟のようなものがマストです。
海上では、すぐに船体は錆びてしまうので手入れをしなければなりません。動画では、大きな錆は見当たりませんね。しっかり、メンテナンス出来ています。
オモテから海面上を覗くと突起物が水面下に見えますね。これがバルバスバウグです。
水を切り裂くように、水の抵抗を抑え燃費を良くしてくれています。
飛行機や新幹線の先端のようなイメージをしてください。
「カーゴホールド(Cargo Hold)」
ドローンで空撮ですね。本船は最大約8,000個のコンテナを積載することが出来ます。
9つの区画に分かれていて、どこで積んで降ろすかを全て計算されています。
冷蔵・冷凍機能があるコンテナもあり、アイスクリームや野菜などはしっかり温度管理されています。お高い海外のアイスクリームのあの会社は温度管理に非常に厳しいと聞きます。
「水密扉(Watertight Door)」
船の扉は、軟弱ではいけません。嵐でも耐えられるように頑丈になっています。丸いハンドルを回して開け閉めする様はまるで金庫のようですね。
「エンジンルーム(Engine Room)」
さて、船の心臓部のエンジンルームです。なんと、68,000Kwもの出力があるそうです!言い換えると、約9万馬力です。馬が9万頭分のパワーです。
乗用車の平均が約130馬力なので、約700台分のパワーがあることになります。もう少しで、赤いパンツで飛び回る科学の子の10万馬力に匹敵するところでした。
自分の身長よりも高いピストン・シリンダーは爽快ですね。さて、このエンジンパワーはプロペラへと伝達されます。長い長い軸が減速機を通してプロペラへと伝わって行きます。
最後は、スイッチボードルームです。たくさんの景気が並び日々機関士が目を通し正常に作動しているか点検しています。
「舵機室(Steering Room)」
その名の通り、舵があります。舵も手動でなんて動かせません。油圧式でじわっと動きます。船って車のようにすんなり曲がれませんからね!
3.動画以外にも・・・
動画以外にも、まだまだ部屋があります。そして、船によってレイアウトが変わっています。保安上等で見せられなかったところを二つ補足しておきましょう。
「シタデル」
直訳すると要塞です。海賊が襲ってきた時に逃込む場所です。中には陸上や付近の船舶と通信する設備があります。外からは開けられないようにさらには頑丈な作りになっています。
海賊は現在でも存在します。小型ボートで横付けしてハシゴをかけて登ってきます。非常に怖いです。身を守るために海賊対策の訓練も船乗りは行っています。
「医務室」
船内には客船でない限り、お医者さんはいません。怪我や病気は自分たちで対処しなければなりません。常備薬や絆創膏などはここに取りに行きましょう。
船乗りは、医療知識の研修も受けています。二人一組になって注射を打ち合う研修は二度とやりたくないですね。
また、手術も出来ます。お医者さんは電話越しにアドバイスしてくれるので器用な船乗りがいてくれると安心できますかね。
おわりに
外航船の中は普段見る事が出来ません。ジェフさんの動画から船の内部や船員の暮らしぶりが見えてきましたね。
何より、大きさに驚愕したのではないでしょうか?ですが、現在(2020年)では400m級のメガコンテナ船が新たに誕生していますよ!東京タワーを優に越してしまいました。
許可を得たものに限りますが、これから日本語検索では出てこないYou Tube動画をどんどんこれから紹介していこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
著者について
氏名:磯崎 亮(仮名)
保有資格:3級海技士(航海) 2級水先免状(3級水先免状)
経歴・船種:練習船(1年)・コンテナ船(3か月)・その後水先人へ
船員を目指したきっかけ:船乗りになりたかった。水先人は操船・離着岸に特化した仕事なので天職と感じました。
仕事内容:水先業
インタビュー・加筆修正:ITecMarin株式会社
【船員の方】
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